クモの決闘
20年も前、白土三平さんのアウトドアをテーマにした
「フィールド・ノート」のなかに、彼が子供のころ夢中になった
「クモの決闘」のことが載っていた。
それからず~っと、いちど見てみたいなーと思い続けていたけれど、
どこでそんなものが見られるのかも分からないし、このケンカグモ
というクモは4月の終わりから5月の始めだけの時期にしか出てこない
らしい。
そんなことで、毎年4月頃になると気になってソワソワするだけで
季節が通り過ぎていたが、思いがどんどんふくらんで、
ヨシ、今年こそは、と本気になり、いろいろ調べていたら、
横浜に保存会があることが分かった。
「横浜ホンチ保存会」といって50人ほどのメンバーがいるらしい。
横浜ではこのクモをホンチと呼び、決闘のことを「ホンチ遊び」と
いって昔からあった漁師の遊びで、子どもの間でも大流行したことが
あるらしい。
連絡をとってみようとしたが、なかなか分からない。
やっと会長の佐藤さんという方と電話で話をすることができた。
話によると5月3日にトーナメント大会があるらしい、
取り仕切っている前川さんを紹介してもらい、参加させて
もらうことにした。なんだか興奮してドキドキしてきた。
5月3日、小雨、港南台の駅前に集合。
なんだかそれらしい集団がいる。
「ホンチ保存会の方ですか?前川さんですか?」
今日の大会は雨のため延期になるかもしれないらしい、
集まってるメンバーはこの日のために自分だけの秘密の場所で
見つけたスゴイのを用意してるみたいだ。
4月中に10回もそれ以上、他県のいろんな場所に採集に行くひとも
いるらしい。飼ってる人もいて、3日ごとに与えるエサ用のハエが手に
入りにくいなどの話が出てくる。
子どもの頃、学校から帰るとすぐホンチ捜しに飛び出していたとか、
親父から教わったとか、クモは大嫌いだけどホンチはべつだよなーとか、
なんだかすごい、みんなホンモノだー、
でも、はじめてのぼくに、みんなすごく親切で大歓迎してくれてるみたい!
ぼくは自由参加ということだったのに、みんながもらってる会報がほしくて
会員になってしまった。トーナメントにも参加することにしました。
この日はやっぱり翌日に延期。
前置きが長くなったけど、翌日同じように集合して会場の山に登る。
ぼくはみんなとちがい出場させるホンチがいないので、会場にいく途中
メンバーのひとたちに手助けしてもらい8匹くらいのホンチを捕った。
捜していると、「キンケツがいたぞー」とか「色がへんなババだな」と
かの専門用語が飛び交う、
キンケツってなんだろう?ケツが金色をしてるやつみたいだ、
ババは♀のことらしい、
みんなが持って来ているのはこの場所のよりデッカイやつらしい。
でも、ぼくもこれで参加できそうだ!
ここで、ホンチの説明をしておくと、
ホンチとはネコハエトリグモのオスの成体のこと、
大きさは8ミリ~1センチくらいの小さな黒いクモで
お尻にカタカナの「キ」みたいな大きな紋がある。
キノコのキでもあるね!
この季節メスとの交尾をめぐって決闘をする。
これは今回捕ったホンチ

昼食後、いよいよトーナメントがはじまった。
Aグループの行司と記録係、Bグループの行司と記録係がテーブルに
向かい合って座る。行司は前川さんと小林さんみたい。

横綱以下3役はシードされているらしい。
行司は小さな2枚のバルサ材の板を両手にもってホンチをあやつる。
2匹のホンチが登場、とおもった瞬間、パッと2本の前足を大きく広げた、
エーッ?!スッゴイー!!2匹が独特の動きをしながら睨み合う、
ぼくは、もうここであまりのすごさに興奮してしまった、
思ったよりスゴイ!!!

このあと4つに組み噛み合いながらの死闘が展開する。
見てるうちにちいさなクモがどんどん大きく見えてきて、
コロッセオで戦うライオンぐらいに見えてくる。

ぼくのホンチはみんなの勧めもあって左足が1本欠けているが
大きくて強そうなのを選び、大奮闘した。3回戦まで勝ち上がり
ベスト8に入った。敢闘賞の盾までもらった。
メンバーの人達も「よくやったー、なかなかつよかったぞー」
みたいなことを言ってくれ、ちょっと照れくさかったけれど、
うれしかった。
優勝は末崎さんという若い人だった。
みなさん、どうもありがとう。
来年も、がんばって参加しよ~っと。
Fujiwara


